アブストラクト(40巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 重症ポンプ失調を伴う急性心筋梗塞に対する緊急冠動脈バイパスの適応について
Subtitle : 原著
Authors : 酒井敬*, 榊成彦*, 平田展章*, 中埜粛**, 松田暉**
Authors(kana) :
Organization : *桜橋渡辺病院心臓外科, **大阪大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 40
Number : 12
Page : 2137-2143
Year/Month : 1992 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 重症ポンプ失調を合併した急性心筋梗塞に対する緊急冠動脈バイパス術(緊急CABG)30例の手術成績と手術効果についてポンプ失調発生の病態の面から検討した. 手術時期は梗塞発症後, 平均2.6日であった. 全例で術前よりIABPによる補助循環を要した. 重症ポンプ失調発生の病態の面から対象を以下の2群に分けた. I群:梗塞範囲が大きいためポンプ失調を呈した症例(19例), II群:梗塞責任血管以外の他枝でも高度の虚血が発症し, ポンプ失調を呈した症例(11例)である. I群の梗塞責任血管は13/19(68%)がLMT病変であり, II群では全例が多枝病変例(3枝病変が7/11(64%), 2枝病変4/11(36%))であった. 両群共に術後急性期の血行動態は改善を認めた. 左室壁運動はI群では術後改善を認めなかったが, II群では他枝の灌流領域で改善が認められた. 手術死亡率はI群で9/19(47%), II群で2/11(18%)であり, II群で良好であった. LOS(低心拍出量症候群)による死亡例はI群では7例(78%)であったが, II群ではLOSによる死亡例は認めなかった. 以上より梗塞責任血管以外の他枝での虚血の発生により重症ポンプ失調を呈した症例は緊急CABGの良い適応症例と考えられた. しかしながら, 梗塞範囲が大きいため重症ポンプ失調を呈した症例の手術成績は不良であり, かかる症例では術後のLOSの発生に対し術中の開心補助手段の改善あるいは術後の強力な補助循環の積極的使用が成績向上に必要であると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 緊急冠動脈バイパス術, 急性心筋梗塞, 重症ポンプ失調
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