Abstract : |
虚血性心疾患に対する冠血行再建術のグラフト材料として内胸動脈(ITA), 右胃大網動脈(RGEA)などの動脈系グラフトが多くの症例に対して使用されているが, 左冠動脈主幹部(LMT)病変症例に対してはあまり一般的ではない. われわれは1989年12月より1991年7月までの1年8ヵ月間に9例のLMT症例を経験した全例に動脈グラフトのみで手術を行った. 使用グラフトはLITA 6本, RITA 9本, RGEA 9本, 合計24本, 1患者当り平均2.7本のバイパスを行った. 手術死亡はなく全例軽快退院したが, 術後急性期には5例にIABPによる補助を必要とした. これら5例は全例90%以上の狭窄を有した症例であり, 90%以下の狭窄を有した4例では全く問題を認めなかったことより, グラフトスパスムによる血流減少が原因と思われた. 術後慢性期では全例NYHAI, 又はII度まで回復しており, 術後心電図負荷試験の行い得た8例のうち7例では全く異常を認めなかった. 術後造影は8例に施行し22本のグラフトのうち21本が開存, 開存率95%であった. LMT症例においてもIABPを併用することにより動脈グラフトのみによる冠血行再建術は可能であった. |