Abstract : |
冠状動脈バイパス手術における内胸動脈グラフト(ITAG)及び静脈グラフト(VG)の遠隔期グラフト特性の解明, 更にITAGの特徴を生かしたグラフト長の延長を目的として以下の実験を行った. 雑種成犬32頭を用いて, 各種バイパスグラフト(BG)を左回旋枝(CX)に吻合後, CX起始部を結紮する方法により, 以下の4群を作製した. LITAG群(n=7):左ITAを使用. VG群(n=6):静脈を使用. ITA-VG群(n=10):左ITAに静脈を端々吻合し使用. ITA-ITAG群(n=6):左ITAに右ITAの一部を端々吻合し使用. 各群の5ヵ月以上の生存例に対して心房ペーシング負荷(AP)を行って血行動態諸標を測定し, コントロール群(C群, n=3)と比較検討した. また, BG及びCXの組織標本を作製し, 病理組織学的検討を行った. C群と比較してVG群(n=3), ITA-VG群(n=2)は, APに伴ってグラフト流量, DPTI(diastolic pressure time index)/TTI(tension time index)は減少し, 左室拡張末期圧(LVEDP), 左房圧(LAP)の上昇を認めたが, LITAG群(n=3)はC群と同様にグラフト流量は増加し, DPTI/TTIは0.7以上を維持し, LVEDP, LAPの上昇を認めなかった. またITA-ITAG群(n=1)はLITAG群と同様の変化を示した. 病理所見上, LITAG群, ITA-ITAG群はCXとの内径差がなく滑らかで, 動脈硬化を認めなかったが, VG群, ITA-VG群はVG内径の不規則な拡大と内膜肥厚を認めた. 以上より, 遠隔期のITAGは動脈硬化を認めず, VGより良好な血液供給能を有すると考えられた. またグラフト長の延長にはITA-ITAGが優れている可能性が示唆された. |