Abstract : |
近年, 糖尿病(DM)合併例に対する冠状動脈バイパス手術(CABG)の検討が数多く報告されているが, 右胃大網動脈(RGEA)を用いたCABGに関して, 糖尿病合併例の検討を行った報告は今だ発表されていない. 当施設において1989年12月から1991年12月までの2年間にGEAを用いたCABGを65例に施行した. 非糖尿病群(I群)は42例(境界型群2例を含む), 糖尿病群(II群)は23例(食事療法6例, 経口糖尿病薬治療10例, インスリン治療7例)の2群に分けて, 手術近接期の臨床成績を両群について検討した. その結果, 手術近接期での臨床成績に関しては, DM群, non-DM群に明らかな差は認められず, 2群とも同様のCABG適応で臨むべきと考えられるが, DM群では術後創感染に対する注意が必要である. また, 術後4~8週目のグラフト造影でGEAグラフトの珠数状狭窄を呈したII群2例は, 遠隔期グラフト変性度, 更には遠隔期グラフト開存率に大きな問題を残すと考えられる. 更に, 術前グラフト造影で, GEAグラフトの50%狭窄(胃大彎中間部)を呈したII群1例は, 狭窄部より近位側にてグラフト吻合し得た. これらのことから, GEAグラフト使用の選択に際し, DM群では特に, 術前GEAグラフト造影が必要と考えられる. |