Abstract : |
1985~89年に術前術中の進行度診断に基づき郭清度を決定した右開胸胸部食道切除再建症例を郭清度別に両側頸部郭清施行A群:102例, 上縦隔重点郭清施行B群:61例, 上縦隔標準郭清施行C群:94例の3群に分け, 頸部上縦隔郭清の侵襲性と有用性を検討した. 転移陽性率, 進行度はA群に高く, 術後合併症発生頻度はA群>C群>B群の順で, 反回神経麻痺はA群の頸部上縦隔転移陽性例に多く認めた. また手術死亡, 入院死亡はA群(特に70歳以上のCO症例)に多かった. 遠隔成績の検討から, 絶対非治癒を除く1985年以降の右開胸切除郭清例の累積生存率は, それ以前(1981~1984年)の右開胸切除標準郭清例に比し予後の改善傾向をみた. 更に1985年以降では3群間に累積生存率の差はなく, CI-III症例でA,B群の頸部転移陰性例とC群とを比較しても生存率に有意差は認めず, 更に確認された再発例の検討ではA群と比較してB,C群のリンパ節再発率は低い傾向がみられた. よって術前術中の進行度診断により頸部上縦隔郭清の適応を決めることは, 郭清範囲の決定, 術後合併症の減少, 遠隔成績の向上に有用と考えられた. また絶対非治癒に終わったCO症例では3群間に有意差はなく, 頸部郭清の有用性は認められなかった. 更に総転移リンパ節数が1~3個の症例でA群の予後がB+C群より良好(p<0.05)であったが, 4個以上では差を認めず, 1~3個の転移症例に両側頸部郭清の有用かつ必要性が示唆された. |