アブストラクト(41巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 冠動脈血行再建術を施行した症例の脳CTスキャン所見の検討
Subtitle : 原著
Authors : 井口篤志*, 佐藤清春*, 貞弘光章**, 遠藤雅人**, 横山斉**, 近江三喜男**
Authors(kana) :
Organization : *仙台徳洲会病院心臓血管外科, **東北大学医学部胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 41
Number : 1
Page : 52-56
Year/Month : 1993 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 大動脈冠動脈バイパス手術(CABG)を施行した症例の脳血管病変の合併と術後に出現する神経精神学的異常の関係を考察する目的で臨床研究を行った. CABGを施行した104例を対象として術前に頭部CT検査を行い, 術後の脳神経系の所見を検討した. 73例のCT所見は正常あるいは年齢相応の軽度な大脳皮質の変化のみを示したが(A群), 16例では大脳皮質が萎縮しており(B群), 15例では大脳深部白質の低吸収像, 側脳室の拡大などBinswanger型の所見を認めた(C群). 頭部CT所見が正常であった症例及び大脳皮質のみの変化を示した症例では術後異常所見を示さなかった. しかし, Binswanger型CT所見を示したC群の症例のうち6例には術後, 見当識障害, 歩行障害, 性格の変化, 尿失禁, 痴呆などの精神神経系の異常所見が出現した. 更に3例は仮性球麻痺を示した. これらの所見は6日から3週間続いたがのち術前の状態に回復した. 退院時には神経精神学的な異常所見は認められず, いずれの群でも90%以上の症例では術後12ヵ月間の追跡で狭心痛の出現はなかった. 精神神経系の異常所見の発生原因は, 主として大脳白質を灌流する細動脈の動脈硬化性病変があり, これに体外循環中の脳血流障害が加わるためと推測された. このため, 術前のCT検査で脳灌流障害が予想される症例では術後の神経精神系の合併症を考慮して冠動脈疾患に対する手術適応をより厳格に判断する必要があると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 頭部CTスキャン, 冠動脈バイパス手術, 動脈硬化症, Mental deficiency
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