Abstract : |
人工心肺下開心術におけるエラスターゼ(顆粒球由来の中性プロテアーゼで組織を破壊する), エンドセリン(血管内皮細胞由来の血管収縮タンパク)の推移が術後の全身臓器・腎機能に及ぼす影響を検討し, カルシウム拮抗剤(塩酸ニカルジピン)の臓器保護効果とそれら因子への影響を検討した. 僧帽弁置換術症例を対象とし, コントロール群(n=10), 塩酸ニカルジピン投与群(n=9)の2群にて検討した. コンロール群にて顆粒球エラスターゼ, エンドセリンは人工心肺の開始とともに, 有意な増加を示した. 人工心肺終了時のエラスターゼ値, エンドセリン値と組胞内ライソゾウム由来酵素β-グルクロニダーゼ(敏感な細胞障害の指標)は, 各々r=0.8, r=0.67と良い相関を示した. 近位尿細管由来逸脱酵素NAG, γ-GTPはエラスターゼ値と各々r=0.74, r=0.75, エンドセリン値とr=0.61, r=0.75と良い相関を示した. 塩酸ニカルジピン投与群では, エンドセリン値はコントロール群の変化と相違が見られなかったが, エラスターゼ, β-グルクロニダーゼ, NAG, γ-GTPの増加は有意 に抑制された. これらの結果からエラスターゼ, エンドセリンが人工心肺中に発生する臓器障害と関係することが示唆された. そして, カルシウム拮抗剤が活性化白血球よりのエラスターゼ放出を抑制すること, 細胞外カルシウムに依存するエンドセリンの血管収縮作用を抑制することにより, 臓器保護効果を示した可能性が考えられた. |