Abstract : |
109例の心臓血管外科手術症例にエリスロポエチン(EPO)を術前投与し, 自己血輸血法も併用して術中術後の同種血無輸血化を試みた. 対象は緊急手術例を除き, 80例の冠動脈バイパス手術と14例の弁置換術, 及び数例の大血管手術で, 平均年齢62歳・平均体重54kgであった. EPOの投与は, 各々体重(kg)当たり100単位連日静注・300単位週2回静注・600単位週1回皮下注の3法のいずれかで行い, 鉄剤も併用した. 自己血は原則としてHbが12g/dl以上で採血し, 通常のCPD液添加冷蔵保存あるいは凍結保存で貯血し, 術中術後に返血した. HbはEPO投与前の12.6(SD;±1.5)g/dlから, 23(SD;±13)日間に563(SD;±353)mlの自己血貯血を得た後, 13.6(SD;±1.2)g/dlへ増加した. 手術から退院までの同種血無輸血率は89%となり, 特にEPO投与前にHbが12g/dl以上の例では96.7%と良好であった. しかし, 投与前Hbが12g/dl未満例では79.6%にとどまり, この群での改善の余地が残された. なお, EPO投与による副作用は認められなかった. EPOは自己血輸血の効率向上に有効で貧血例も含めその適応範囲は拡大され, 同種血輸血の回避に極めて有効な手段と考えられた. |