アブストラクト(41巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 成人総肺静脈還流異常症手術症例の検討
Subtitle : 原著
Authors : 石部良平*, 有川和宏*, 豊平均*, 下川新二*, 梅林雄介*, 橋口雅彦*, 増田宏*, 平明*, 森下靖雄**
Authors(kana) :
Organization : *鹿児島大学医学部第2外科, **群馬大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 41
Number : 2
Page : 199-204
Year/Month : 1993 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 18歳以上の総肺静脈還流異常症(以下TAPVD)の4手術治験例を経験した. 年齢は18歳から51歳までで, 平均33.8歳であった. Darling分類ではIa型が3例, IV型が1例であった. 胸部単純X線写真上, 全例にいわゆるsnowman shadowが観察され, 肺血流量も増加していた. 心胸郭比は56~72%(平均62%)であった. 心臓カテーテル検査で肺対体血流比(Qp/Qs)は1.71~5.93(平均3.92), 肺対体血圧比(Pp/Ps)は0.34~0.49(平均0.38), 肺対体血管抵抗比(Rp/Rs)は0.02~0.15(平均0.09)で, 特にRp/Rsでは軽度の上昇に止まっていた. 手術は全例に心房と共通肺静脈幹の吻合, 心房内短絡路(二次口開存)の閉鎖, 及びdrainage veinの結紮を行った. 心房と共通肺静脈幹の吻合には2例に心房横断法を, 2例に心尖部脱転法を用いたが, 特に左心房の小さかった症例4では脱転法のみでは十分な術野が得られず, 左心房内よりの吻合も追加した. 二次口開存の大きさは術中の最大径の計測で, 35~55mm(平均43mm)と全例とも比較的大きかった. 術後の心臓カテーテル検査ではPp/Psは低下したものの, Rp/Rsの低下は見られなかった. TAPVD患者が成人になるまで生存するには十分な大きさの二次口開存とshort route typeのdrainage vein, 及び肺静脈狭窄がないことが重要なポイントとなる. 手術法としては心筋保護の発達した現在, 種々の方法を勘案する必要がある. 特に左心房が小さいような症例では二次口開存を通して左心房内腔よりのapproachを組み合わせることにより良好な術野が得られる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 総肺静脈還流異常症, 心臓カテーテル検査, 心房横断法, 心尖部脱転法
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