アブストラクト(41巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 体外循環侵襲への血小板活性化因子の関与について
Subtitle : 原著
Authors : 乾清重, 鷲尾正彦
Authors(kana) :
Organization : 山形大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 41
Number : 2
Page : 238-246
Year/Month : 1993 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 体外循環中には補体活性化に続き白血球・血小板の活性化が生じている. これらを強く活性化する血小板活性化因子(PAF)の体外循環中の変動を測定し臨床的意義につき検討した. 犬を用いた体外循環実験でPAF活性値・白血球数・血小板数の変化を調べ, 臨床症例で血小板数・β-トロンボグロブリン(β-TG)・血小板第4因子(PF4)の測定を行い血小板活性化状態を検討した. 実験でのPAF増加は開始30分で前値の約4.6倍に達していた. 臨床例でも開始早期から増加していた. 体外循環中の白血球・血小板数の変動に対しては, PAF antagonist投与の有無により有意差を認めなかった. しかし, 開始5分での肺動脈-肺静脈間の白血球数の差は, 非投与群の1,402/mm3に対し投与群では666/mm3と有意に少なく, 肺での白血球集積に差がみられた. また, 終了後に摘出した肺組織で肺毛細血管内多核白血球を検索すると, 投与群での多核白血球集積は有意に少なかった. このことより白血球の肺集積は体外循環開始早期より生じ, 体外循環中の白血球肺集積にPAFが関与していると考えられた. また, 臨床例での血小板活性化の検討では, 開始5分で血小板の急激な減少とPF4・β-TGの増加がみられ, 血小板の活性化も開始早期から生じていると考えられた. 大動脈遮断前に肺に集積する活性化白血球や血小板が存在することは, 心肺に対する虚血及び再灌流による傷害進展に重要な意味を持つと考えられる. これに対する対策として, 体外循環安定後可及的早期に大動脈を遮断し流入量を抑制すること, 及びPAF antagonist投与により, 白血球・血小板などの炎症細胞の活性化を直接抑制することが有効と考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 血小板活性化因子, 体外循環
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