Abstract : |
活性酸素消去剤の1つであるrecombinant human superoxide dismutase(rh-SOD)の心筋保護効果について臨床的に検討した. 1989年9月から1991年3月までに当科にて施行した成人弁膜症例51例を対象とし, 次の4群に分類した. I群(対象群, n=14):大動脈遮断解除直前に大動脈基部より生理食塩水50mlを投与, II群(n=14):rh-SOD10,000unit/kgを大動脈遮断解除直前に大動脈基部より投与, III群(n=13):rh-SOD10,000unit/kgを大動脈遮断解除数分前に人工心肺内に投与, IV群(n=10):rh-SOD3,000unit/kgをIII群と同方法で投与. これら4群について大動脈遮断解除前, 遮断解除5, 30, 60分, 3, 6, 9, 12, 24時間後のCPK-MB, HBDH, TBA, SOD濃度を測定し, それぞれの測定値から大動脈遮断解除直前の測定値を減じた値をΔCPK-MB, ΔHBDH, ΔTBAとした. ΔCPK-MBは遮断解除12, 24時間値においてII群がI群に対して有意に低値を示した. III群, IV群は有意差を認めなかった. ΔHBDHは12時間後にてII群がI群に対して有意に低値となり, 1時間, 9時間後にてIII群がI群に対し低値となる傾向を示した. ΔTBAはII群はI群に対して9時間, 12時間にて低値を示した. 大動脈遮断解除後の自己心拍回復までの時間は, II群はI群に比べ有意に短縮していた. これらより, 臨床例におけるrh-SODの心筋保護効果に対する有効性が示唆された. 投与方法は, 再灌流直前に冠動脈内に直接投与する方法が最も効果的と考えられるが, 投与量を増加させることにより, 人工心肺内投与においても有効性が増す可能性があると考える. |