Abstract : |
1977年1月より1992年4月までに原発性心臓腫瘍34例を経験したので診断, 治療上の問題点を検討した. 症例は良性腫瘍30例, 悪性腫瘍4例で, 年齢は28歳から80歳(平均55歳)で, 男性11例, 女性23例であった. 良性腫瘍は全例粘液腫で悪性腫瘍の4例は横紋筋肉腫2例, 円形細胞肉腫及び悪性線維性組織球腫各1例であった. 臨床症状は心不全を74%に, 塞栓症を29%に非特異的全身症状を64%に認めた. 診断には心エコー検査が有効であるが, 腫瘍の良, 悪性の鑑別など質的診断には限界がある. 粘液腫は腫瘍形態により術前症状, 塞栓症の頻度に差を認めたが, 予後に影響するものではない. 全例, 腫瘍付着部の心内膜を含めて摘出し得, 手術死亡はなかった. 術後最長15年の観察期間では臨床的にも, 心エコー検査上も再発の徴候を認めていない. 15年生存率は89%であった. 一方, 部分摘出にとどまった悪性腫瘍の4例は全例術後9ヵ月以内に失った. 原発性心臓腫瘍は, 弁口部の完全閉塞や塞栓症など致命的な合併症をきたす可能性があり, 可及的早期の手術が望まれる. 粘液腫は茎根部の正常心筋を含めて切除することで十分であるが, 心腔内播種や末梢塞栓を予防するために細心の注意を払うべきで, 時に房室弁に対する外科処置を必要とすることもある. 悪性腫瘍は完全摘出が困難な場合が多く, 術後の化学療法, 放射線療法の併用など集学的治療法の確立が望まれる. |