アブストラクト(41巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心移植レシピエント及び心移植ドナーから採取した大動脈ホモグラフトの外科治療の検討
Subtitle : 原著
Authors : 申範圭, Alan Farnsworth, Phillip Spratt, Victor Chang
Authors(kana) :
Organization : Department of Cardiothoracic Surgery, St. Vincent's Hospital, Sydney, Australia
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 41
Number : 3
Page : 417-420
Year/Month : 1993 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1988年3月より1991年11月までに, 心移植レシピエントまたは使用不能の心移植ドナー心より採取したホモグラフトを大動脈弁位に用いた24例につき検討した. 年齢は19~77(平均44±14)歳, 男女比は15対9, 主病変はAS8例, AR8例, ASR3例, Annulo-aortic ectasia2例, 再手術例3例であった. 再手術例のうち2例は人工弁置換術後の活動性感染性心内膜炎で何れも弁輪部と左房の間に瘻孔を形成していた症例で, 他の1例は狭小大動脈弁輪に弁下部膜性狭窄を合併した症例であった. 術前のNYHA分類はII度1例, III度19例, IV度4例であった. 手術は大動脈弁置換術を17例に, 大動脈根部置換術を7例に行った. 感染性心内膜炎で瘻孔を形成した症例では, 瘻孔の閉鎖に大動脈弁ホモグラフトに付着する僧帽弁前尖を利用した. 狭小大動脈弁輪の症例に対して今野-相馬法による弁輪拡大術を行い, 心室中隔切開部の閉鎖にホモグラフトの僧帽弁前尖を有効利用できた. 手術成績は, 入院死亡, 遠隔期死亡は共に認めなかった. 経過観察期間は2~34(平均12.6)ヵ月で, 弁のstructural deteriorationはなく, nonstructural dysfunctionとして中等度のARを1例に, 軽度のparavalvular leakを1例に認めた. 1例を除き抗凝固療法及び抗血栓療法は行っていないが血栓塞栓症の合併はなかった. 術後感染性心内膜炎の合併もなかった. 術後の超音波検査で軽度の圧較差を5例に認めたが, 総じて良好な血行動態を示した. 術後NYHA分類は全例I度に改善した. ホモグラフトの処理方法は, 初期の5例に使用したものは採取後, 摂氏4度で24時間の抗生剤処理を行った後に冷凍保存したが, その後は採取後, 直ちに冷凍保存を行っている. 術後3年までの成績は良好であった. 術後の感染性心内膜炎の合併はなく, 心移植レシピエントまたはドナーより採取した場合には抗生剤処理を行わずに直ちに冷凍保存が可能と考えられ, ホモグラフトのcell viabilityを維持するのに有利と考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : ホモグラフト, 大動脈ホモグラフト, 心移植, 大動脈弁置換術
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