アブストラクト(41巻3号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : K+チャネルオープナー, クロマカリムの心筋保護効果-摘出ラット虚血再灌流心での検討-
Subtitle : 原著
Authors : 滝浩樹, 増田裕, 吉栖正典, 北川哲也, 加藤逸夫
Authors(kana) :
Organization : 徳島大学医学部心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 41
Number : 3
Page : 438-444
Year/Month : 1993 / 3
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 摘出ラット虚血再灌流心で, ATP感受性K+(KATP)チャネルを介する心筋保護効果について, K+チャネルオープナーであるクロマカリムを用いて検討した. 20分間Langendorff灌流(70cm水柱圧, 37℃)し, 30分間36℃の常温虚血の後, 30分間再灌流を行った群を対照群(C群)とした. これに対し, 虚血前の5分間に灌流液中に10μMクロマカリムを添加した後, C群と同様に虚血再灌流を行った群をクロマカリム群(CR群)とした. 虚血前にはクロマカリムにより心拍数, 左室内圧, 冠灌流量は有意な変化を示さなかった. 再灌流時に, 冠灌流量は両群間で差を認めなかったが, 左室内圧, 心拍数は, CR群で有意に高値であった. また, CR群の再灌流時流出液中CK活性は, C群に比し有意に低値を示した. 心機能及びCK活性からみて虚血再灌流時の心筋障害は, CR群の方がC群より軽度であった. 原子吸光法で求めた細胞内Ca2+含量は, 再灌流開始30分後にC群で有意に高値であった. 再灌流開始5分後から30分後にかけ, CR群ではCa2+の細胞内蓄積が防止され, 良好な心機能を示したのに対し, C群では細胞内のCa2+が増加し, 心機能の回復も不良であった. 細胞内K+含量は, CR群でC群より虚血直前に有意に低値となり, 再灌流開始5分後にも低値を示す傾向にあった. 今回の実験結果より, K+チャネルオープナーであるクロマカリムが, 虚血前及び再灌流早期にKATPチャネルに作用し, 細胞内K+含量の低下をもたらし, また再灌流時の細胞内Ca2+の蓄積を防止して, 常温虚血ラット心に対する心筋保護効果を発現したものと考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : KATPチャネル, クロマカリム, 心筋保護, 細胞内電解質
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