Abstract : |
右心補助循環の効果と問題点を明らかにする目的で, 急性右心不全モデルを作成し, 右心補助が肺循環, 呼吸機能並びに左心機能に及ぼす影響を検討した. 雑種成犬30頭を用い, 右冠動脈を中枢側及び鋭角枝近傍で結紮し, 鉗子を用いて腱索を断裂させ三尖弁逆流を作成した. 更に, 右室自由壁心筋内に0.1ml/kgの5モル-NaOHを注入し, 急性右心不全モデルとした. 右心補助は, 右房脱血, 肺動脈幹送血で, diaphragm型ポンプ(空気圧駆動, 容量20ml)を用い, %systoleを40%, 100回/分の非同期固定レートで開始した. 大動脈血流量の30%補助を1群(10頭), 60%補助をII群(10頭), 100%補助をIII群(10頭)とした. 右心不全時の全身循環の維持は, 30%右心補助で十分可能で, 肺循環とガス交換能の検討から, III群の過剰な右心補助は, 肺血管外への体液移動量を増加させ, 肺の酸素加能を障害した. 熱-ナトリウム二重指示薬希釈法で測定した肺血管外水分量は, 補助前及び1~4時間までは3群間に有意差を認めないが, III群5時間値は8.9±2.2ml/kgで, I群及びII群5時間値6.1±1.3ml/kg及び6.1±1.1ml/kgに比し有意(ともにp<0.01)に高値で, 細動脈周囲の間質浮腫がIII群で高度であった肺の病理組織所見と一致した. 左心機能は, 各群でおおむね良好に維持されたが, 左室max dp/dtのIII群5時間値は他群のそれに比し有意(p<0.05)に低下した. 以上より, 右心の補助流量の決定に当たっては, 主要臓器灌流を保証する大動脈圧及び血流量を維持しつつ, 肺血管床への侵襲を抑制するため補助率を極力軽減すべきと思われた. |