アブストラクト(41巻4号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : イヌ同種肺移植におけるFK-506の気管支吻合部創傷治癒に及ぼす影響について
Subtitle : 原著
Authors : 赤嶺晋治, 川原克信, 高橋孝郎, 小林誠博, 糸柳則昭, 林田謙, 綾部公懿, 富田正雄
Authors(kana) :
Organization : 長崎大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 41
Number : 4
Page : 619-624
Year/Month : 1993 / 4
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : FK-506の気管支吻合部に与える創傷治癒の影響についてイヌを用いて実験的に検討した. 雑種成犬44頭に対し左開胸下に自家肺移植, または左同種肺移植を行い, A群:自家肺移植犬(n=18), B群:同種肺移植犬-cyclosporin A(CsA)20mg/kg経口投与(n=13), C群:同種肺移植犬-FK-506 0.1mg/kg筋肉内注射(n=13)のIII群に分けた. C群は気管支吻合部を大網にて被覆した. 術後1~4週目に気管支吻合部, 移植肺を摘出し組織学的に観察した. 炎症反応は浸潤細胞の種類, 出血, 変性壊死, 潰瘍の有無, 膠原線維の増生の程度でscore化し, 合計をInflammatory Response Score(IRS)として創傷治癒の程度を評価した. 肺組織の拒絶反応の発現頻度に差はみられなかった. 炎症細胞の浸潤は各群に差はみられなかった. C群の膠原線維の増生は2週ですべて中等度以上であり, 3週目以降では全例が高度であった. IRSはA群1週(n=6)9.1±1.5, 2週(n=10)4.8±1.3, 3週(n=2)3.0±0, B群1週(n=1)8, 2週(n=8)5.1±1.2, 3ないし4週(n=4)3.2±1.9, C群1週(n=2)8, 2週目(n=4)4.3±1.0, 3ないし4週(n=7)2.0±1.2でいずれの群でも経時的に有意の差はみられなかった. FK-506投与犬は自家移植肺と同じ程度の炎症反応を示したが, 膠原繊維の増生は自家肺移植犬やCsA投与犬に比して強い傾向にあった. 従って, 大網被覆例に投与されたFK-506は創傷治癒を遷延させることなく, CsAと同様に拒絶反応を抑制しつつ, しかも良好な気管支吻合部の治癒が得られることが示された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 肺移植, 気管支吻合部, 創傷治癒, FK-506, サイクロスポリンA
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