Abstract : |
1976年9月から1989年7月までに異種生体弁を用いた単独僧帽弁置換術152症例を対象として遠隔成績を検討した. 年齢は19~73歳(平均47.9歳), 男性51例, 女性101例であった. 使用した異種生体弁はHancockブタ大動脈弁44例, Carpentier-Edwardsブタ大動脈弁28例, Ionescue-Shiley弁牛心膜弁46例, Carpentier-Edwards牛心膜弁34例であった. 術後抗凝血薬療法は134例中104例(77.6%)が1年以内に中止した. 生存退院例137例の追跡率は97.8%で, 累積追跡期間は1151.0患者・年, 平均観察期間7.6年であった. 遠隔期死亡は14例(9.2%)で, 手術死亡を含めた術後10年の累積生存率は76.0%であった. 異種生体弁機能不全非発生率は術後5年, 7年では各々96.7, 82.8%であったが, 術後10年では56.7%と激減した. また, 年齢別では60歳以上の18例では弁機能不全の発生はみられなかったが, 40歳未満の症例では4.9%/患者・年であった. 人工弁感染症及び血栓塞栓症の発生率は, 各々0.3%/患者・年, 1.3%/患者・年であった. 血栓塞栓症を起こした25例中10例(40.0%)が死亡するか, あるいは重篤な後遺症がみられた. 以上の結果から僧帽弁位における異種生体弁は, 弁置換術後の抗凝血薬療法が必要と思われる. また, 長期の耐久性になお問題を有することから, 現時点においては高齢者, 妊娠出産を希望する症例, 重症の合併症を有する症例などに異種生体弁の使用を限定する必要があると思われる. |