Abstract : |
弓部大動脈瘤手術では手術中の脳及び心臓の保護を安全, 確実に行うことが重要である. 当センターでは手術時の補助手段として, ポンプと小型交換器を用いた独自の選択的脳冷却灌流法を臨床応用し, これまでに7例の手術を実施したのでその臨床成績, 及び本法の利点と課題について検討した. 本法は16℃の酸素加血液で全身とは別に選択的に脳を冷却灌流するので必要に応じて脳循環の停止を行うことが可能であり, また全身を超低体温とする必要がないため, 弓部再建操作の途中から加温して体外循環時間の短縮ができる点に特徴がある. 本法を補助手段として手術を実施した7例の平均脳灌流時間は93分, 平均心停止時間は93分, 平均体外循環時間は201分であった. 動脈瘤破裂に対する緊急手術の1例(14%)を失ったが, 他は生存し, 日常生活に復帰した. 回路の工夫により従来の落差方式と比較してプライミング量を150mlにまで減少することができ, どの施設でも容易に本法の実施が可能になったと考えられる. 装置の準備は簡単で, 緊急手術時にもただちに対応でき, 本法は弓部大動脈瘤手術の際の優れた補助手段の1つと考えられた. |