Abstract : |
虚血再灌流障害の予防のためfree radical scavenger(FRS)の投与が試みられているが, いまだ満足のいく結果が得られていない. 今回, 著者は心肺移植後の再灌流障害のfree radical(FR)産生を, その主な発生源である好中球と血管内皮細胞の役割に注目し検討した. 犬を用いShafersらの方法に準じ22組の異所性心同所性肺移植を行い, 4時間保存後再灌流した. 対照群(I群)8例, allopurinol投与群(II群)7例, SOD(superoxide dismutase), CAT(catalase)投与群(III群)7例に分け, 好中球から発生するFRを化学発光(ChL)法で, 血中FRをESR(electron spin resonance)法により, また心肺機能(max dp/dt, 肺静脈血酸素分圧)を測定した. 心肺機能はIII群, II群, I群の順に良好に保たれた. 再灌流後60分ではII群, III群の間に有意差を認めなかった. ESRシグナルの超微細分裂定数はaN:1.48~1.57mT, aH:0.27~0.29mTで, 肺静脈血中のシグナル強度(S.H./mg)は再灌流後10分で, I群:7.12±1.91, II群:4.06±1.23, III群ではほとんど検出されなかった. 好中球のChL強度は移植前と比較して, 再灌流後10分でいずれの群も低下した. 以上の結果から, 肺を循環した好中球は既に活性が低下していることが考えられ, 更にSOD, CATを投与し血中FRを完全に消去したにもかかわらず心肺機能が低下していくのは, 活性の高い好中球の一部は, 再灌流後早期に血管内皮細胞に膠着, あるいは組織内に移行していることが考えられた. |