Abstract : |
当科で施行された冠状動脈バイパス術症例25例の, 左内胸動脈(LITA)25本, 右内胸動脈(RITA)10本を対象に, バルーンカテーテルを用いてITAを拡張させ, そのFree Flow(FF)を, コントロール並びに塩酸パパベリン液注入によるFFと比較検討した. 更に術後造影所見並びにITAの走査電顕像についても検討した. LITAのFFはコントロールで平均64.2ml/分から塩酸パパベリン液注入で平均101.9ml/分と有意に増加し(p<0.05), バルーンによるFFは平均160.8ml/分で, コントロール, 塩酸パパベリン液注入に比し有意に増加した(p<0.01, p<0.01). RITAのFFはコントロールで平均78.4ml/分から塩酸パパベリン液注入で平均129.2ml/分まで有意に増加し(p<0.05), バルーンによるFF平均183.2ml/分でコントロール, 塩酸パパベリン液注入に比し有意に増加した(p<0.01, p<0.05). 術後造影において開存率は100%であったが, LITAの14%, RITAの22%, 平均16%に内壁の不整を認めた. 走査電顕像では, ITA中枢側では内皮層の配列は比較的よく保たれていたが, ITA末梢側では内皮層があらく, 一部破壊が認められ, これがITA内壁の不整の原因と考えられた. 以上より当手技はITAのFFを増加させるには極めて有効であるが, その適応には慎重であるべきと考えられた. |