Authors : |
三澤吉雄, 長谷川嗣夫, 蘇原泰則, 加藤盛人, 上沢修, 堀見博之, 長谷川伸之, 斉藤力, 山口勉, 大木伸一 |
Abstract : |
左室容量負荷を来す大動脈弁閉鎖不全と僧帽弁閉鎖不全の弁置換術後心機能変化の類似点・相違点を探った. 手術直前の心エコー図上, 左室収縮末期径(LVDs)>50mm, 且つfractional shortening (FS)<25%をGroup A(重症群), 他をGroup B(軽症群)とし, 術後1年, 同3年, 同5年でのLVDs, FS及び左室拡張末期径(LVDd), ejection fraction(EF)などを検討した. 孤立性の大動脈弁閉鎖不全に対する大動脈弁置換(AVR)症例は30例で, Group A 13例, Group B 17例であり, 僧帽弁置換(MVR)症例は52例で, Group A 12例, Group B 40例であった. Group Aの手術時平均年齢は, AVR症例で47±14歳, MVR症例で54±14歳で有意差はなく, 病悩期間もそれぞれ9±11年, 11±10年と有意差はなかった. Group Bの手術時平均年齢や病悩期間もAVR症例, MVR症例の間に有意差はみられなかった. AVR症例とMVR症例とでGroup Aの術後心機能を比較すると, LVDs, FS ともにAVR症例では, 術後1年, 同3年と著明に改善し正常化するが, MVR症例では術後1年で軽度改善傾向がみられるものの正常化はせず, その後はむしろ増悪傾向がみられた. LVDd, EFも同様の傾向であった. またGroup Bの比較では, LVDs, LVDdはAVR症例, MVR症例ともに, 術後1年で正常化し, 経時的にも増悪傾向はみられず, FSやEFには術前後で著変がみられなかった. 以上より, 重症大動脈弁閉鎖不全と重症僧帽弁閉鎖不全では, 弁置換術後心機能の改善に差異を生ずることが確認された. |