アブストラクト(41巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 落差方式脳分離灌流法による脳保護を用いた軸部大動脈再建手術
Subtitle :
Authors : 横手祐二, 木村壮介, 許俊鋭, 長谷川和康, 上田恵介, 朝野晴彦, 尾本良三, 安達秀雄*
Authors(kana) :
Organization : 埼玉医科大学第1外科, *自治医科大学大宮医療センター心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 41
Number : 7
Page : 1119-1124
Year/Month : 1993 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 弓部大動脈再建手術においては脳保護の方法が手術成績に関係する重要な要因である. われわれは, 酸素加血を人工心肺回路から患者の約1m上方に設置した熱交換器内蔵貯血槽に汲み上げ, 任意の温度に冷却した上で落差により弓部分枝に選択的灌流を行って弓部再建中の脳保護を行う方法を考案し臨床に応用した. 過去3年8ヵ月の間に本法を用いて30症例で弓部大動脈再建を行った. 全身冷却温は直腸温20℃~22℃, 脳灌流温は16℃を目標として血液冷却を行い, 脳灌流量が平均350ml/分となるように落差を設定した. 30症例のうち23例は術後の意識障害がなく麻酔覚醒も問題なかったが(Group-1), 7例に術後意識障害あるいは覚醒遅延が認められた(Group-2). 両Groupの平均年齢は62歳と64歳で差はなく, 70歳以上の高齢者の割合にも差はみられなかった. 平均脳分離灌流時間はGroup-1は68.8±36.3分Group-2は85.0±31.0分で有意差はなかった. 温度, 流量など他の脳分離灌流条件に関しても両Group間に差は見られなかった. 一方, 術前の動脈瘤破裂あるいは術後のLOSによるショック状態は, Group-2で有意に高率であった. また平均体外循環時間もGroup-1で183±54分であったのに比して, Group-2では234±61分と有意に長く, 術前後のショック状態の存在とそれに伴う体外循環時間の遷延が, 術後の意識回復と大きく関わっていた. 落差方式脳分離灌流法による脳保護は, 脳冷却を全身冷却と別個に設定でき, 長時間安定した低温灌流による脳保護が可能で, 体外循環時間の短縮も図り得ることから, 臨床応用上有用と考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 弓部大動脈瘤, 脳分離灌流, 脳保護, 落差方式, 術後意識障害
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