Abstract : |
1986年3月から1992年8月までに血液透析患者5例に対し開心術を行った. 術式は冠状動脈バイパス術2例, 僧帽弁置換術1例, 大動脈弁置換術2例, 年齢は39~65歳, 平均血液透析歴は67ヵ月であった. 全例術前2ないし3日間の連日血液透析を行い, 体外循環中は限外濾過(ECUM)による除水を行った. 慢性腎不全患者では出血時間の延長及び血小板機能異常を示す症例が多いことから, 全例で体外循環終了後13ないし16単位の他家アフェレーシス血小板血漿を輸血した. 最初の1例では術後, 手術当日から局所ヘパリン化法で血液透析を開始したが, 第1病日出血による再開胸を余儀なくされた. 他の4例では手術当日は限外濾過による除水のみを行い, 血液透析は抗凝固剤としてnafamostat mesilateを用いて第1, 又は第2病日から開始した. 手術死亡はなく平均観察期間28ヵ月で遠隔死亡も認めなかった. 結論として, 血液透析患者5例に対して開心術を行い手術成績及び遠隔成績は良好であった. 術後早期にも血液透析は安全に行うことができた. 血液透析時の抗凝固剤としては出血合併症予防の点でnafamostat mesilateが有用であった. |