アブストラクト(41巻7号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : ニホンザル同種肺移植におけるFK506の免疫抑制効果に関する研究
Subtitle :
Authors : 中島淳, 古瀬彰
Authors(kana) :
Organization : 東京大学医学部胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 41
Number : 7
Page : 1172-1183
Year/Month : 1993 / 7
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 肺移植術後免疫抑制療法としてのFK506(FK)単独投与の有効性の検討のため, 雑種オスニホンザルを用いて同種同所性左片肺移植を施行した. FK投与群には術後0.5mg/kg(0~6POD), 以後0.15mg/kgのFKを連日筋注した. 拒絶反応の指標として胸部X線写真所見・病理組織学的所見・免疫染色所見を検討した. FK投与群(N=7)で術後5~182日, 非投与群(N=7)で5~35日生存した. 投与群1頭以外は犠牲死であった. 胸部X線写真上, 投与群では術後7~14病日に移植肺陰影の一過性増強の後に軽快し, 術後3週以上生存の4頭では, 肺炎併発の1頭以外陰影は再増強しなかった. 一方非投与群では術後第2~3病日から陰影が増強し, 第6~7病日で含気が失われた. 移植肺組織HE所見では, 投与群には全経過を通じて単核球浸潤は無いか, ごく軽度であった. 一方非投与群では第3病日から中小肺静脈周囲に単核球浸潤が認められ, 第5~7病日には肺胞壁にも細胞浸潤が認められ, 第14病日以後は壊死を認めた. 移植肺免疫組織染色では, CD8陽性細胞は非投与群では第2病日から認められ, その後細胞数が増加する傾向が認められた. 投与群でも第5病日にCD8陽性細胞が認められたが, 非投与群に比べ少ない傾向であり, その後も細胞数の増加傾向は認められなかった. 投与群のFK血中濃度は術後平均1.06~1.81ng/mlであり, 第2~3病日には平均1.81ng/mlと, 術後早期に十分な濃度に達した. 術後血液生化学検査では総ビリルビン・クレアチニン・GOT値が投与群において有意に低値であった. 以上からニホンザル同種左片肺移植では, FKの単独投与が十分な免疫抑制効果を有すると結論され, 臨床肺移植におけるFKの有用性が本研究から示されたと考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : ニホンザル, 同種同所性片肺移植, FK506, 免疫抑制, 急性拒絶反応
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