Authors : |
笹栗志朗, 細田泰之, 田原稔, 渡辺隆, 数井学, 菊地憲男, 後藤昌弘, 山室真澄, 山本晋, 忽滑谷通夫 |
Abstract : |
冠状動脈バイパス術に用いられる大伏在静脈(SV), 内胸動脈(ITA), 右胃大網動脈(GEA)の血管構造の特異性を明らかにするために, 平滑筋細胞内の細胞骨格蛋白であるactin(A), desmin(D), vimentin(V)を免疫組織化学的に標識することにより, それぞれの内膜及び中膜の平滑筋細胞のphenotypeを比較検討した. 更に電顕的に内皮細胞の形態を観察した. SVでは, 内膜及び中膜平滑筋細胞は(A+, D+, V+)の表現型を示す細胞が多数を占めたのに対して, GEA, ITAの動脈グラフトでは内膜中膜ともに(A+, D-, V+)の表現型をとる細胞が多数を占めた. ITA, GEAの動脈内皮細胞はSVの静脈内皮細胞と異なり, 厚みのある細胞質が内皮下弾性結合組織層にひだ状突起を出し剥離しずらい形態を呈していた. 動静脈グラフト間における平滑筋細胞のphenotype, 及び内皮細胞の形態的相違は, 内皮細胞の傷害に始まり, 平滑筋細胞の増殖により進展するグラフト硬化の過程に影響を及ぼす可能性が示唆された. |