Abstract : |
冠状動脈バイパス術における中枢側吻合法を, 末梢側吻合終了後大動脈部分遮断にて心拍動下に行った群(PAC群)と, 大動脈完全遮断下にすべての吻合を行った群(SAX群)の2群に分類し, 心筋保護の面より検討をくわえた. 大動脈遮断時間はSAX群が有意に長く(78.2分:63.2分), 全体外循環時間には有意差はなかった(120.4分:109分). 心蘇生後体外循環離脱時間はSAX群の方が若干短かったが有意差はなかった(37.4分:41分). 血清総CPK値は, SAX群では術後1日目, 2日目と漸増し, PAC群では術後12時間目から術後1日目にかけて最高値を示し, 両群とも以後減少した. 両群に有意差はなかった. CPK-MB値はSAX群が若干低値を示したが有意差はなかった. 以上より両群に有意差を見いだすことは出来なかったが, SAX法は大動脈遮断時間が有意に長いものの臨床上許容範囲内であり, 心筋保護においてもPAC群と差はなかった. SAX法の利点は, 吻合口作成並びに吻合操作が容易になり, 中枢側吻合数が増加しても常にきれいな吻合口の作成が可能で, 大動脈壁の動脈硬化が強く壁が厚い場合, あるいは上行大動脈の短い症例にも極めて有効である. また, 冠状動脈バイパス症例の病態が動脈硬化であり, 粥腫塞栓防止において遮断が1回で済む本法は有利と考えられた. |