| Authors ： |
蓑原靖一良, 佐々木進次郎, 麻田邦夫, 近藤敬一郎, 巽孝彦, 小玉敏宏, 西本泰久, 長谷川滋人, 森田雅文, 武内敦郎 |
| Abstract ： |
1984年から91年までに行われた胸骨正中切開による心臓手術1,040例のうち, 31例(3.0%)に術後感染性胸骨正中創多開を認め, これらを対象として心臓手術後胸骨炎及び縦隔炎の誘因と治療法について検討を加えた. 術前, 術中及び術後の各誘因について対照例と比較検討したところ, 性別, 体表面積には差異はなかったが, 年齢, 糖尿病の合併率, 術後急性期の再開胸止血術の頻度は多開群で有意に高く, 手術時間, 人工心肺時間も多開群で長かった. CABGにおけるグラフト別の発症頻度は両側内胸動脈使用例で, 片側内胸動脈使用例及び内胸動脈非使用例に比べて有意に高かった. 治療法についての検討では開放排膿法と閉鎖洗浄法に比べて大胸筋弁充填法が治癒日数, 治癒率, 予後の点で良好な成績を示した. 心臓手術後の感染性胸骨正中創多開の誘因は, 糖尿病, 高齢, 両側ITAの使用, 体外循環時間の延長, 再開胸止血術の追加などが考えられた. 予防法としては, 手術時間の短縮, 再開胸止血術を防ぐべく確実な手術操作が重要であり, CABGにおいては糖尿病合併例では両側ITAの使用は控えるべきである. また, 治療法では胸骨炎, 縦隔炎に及んだ場合は有茎大胸筋弁充填法などを考慮すべきと考えられた. |
