Abstract : |
自己大伏在静脈を用いた冠状動脈バイパス術(CABG)後5日から9ヵ月の間に死亡した5例9枝の剖検例を対象に, グラフト-冠状動脈吻合部に増殖した新生組織の細胞成分及び平滑筋細胞のimmunophenotypeについて検討した. 免疫細胞化学的検索には, 抗筋細胞アクチン抗体, 抗平滑筋細胞アクチン抗体, 抗ピメンチン抗体, 抗デスミン抗体, 抗マクロファージ抗体, 抗内皮細胞抗体の各モノクローナル抗体を用いた. CABG後吻合部が開存していたもの(開存群)は9枝中5枝で, 他の4枝の吻合部は血栓ないしその器質化組織により閉塞していた(閉塞群). 開存群のうちCABG後9日例では, 内膜肥厚の初期像が観察され, そこにはマクロファージの他, 抗ビメンチン抗体にのみ陽性を示す脱分化した平滑筋細胞が認められた. これに対しCABG後33日例と同9ヵ月例の内膜肥厚部では, 構成細胞成分の主体はより分化した平滑筋細胞であった. CABG33日後の内膜肥厚部では内皮細胞の被覆は不完全であり, また深層部と浅層部とでは平滑筋細胞のimmunophenotypeに違いが認められたが, 同9ヵ月例の内膜肥厚部では内皮細胞の完全な被覆が認められ, また構成平滑筋細胞のimmunophenotyeは一様であった. 一方, 閉塞群のうちCABG後55日例では, 閉塞部の増殖組織はマクロファージ, 平滑筋細胞, 新生血管の3成分から成っていた. これらの点より, 吻合部における内膜肥厚性病変の進展過程では, (1)増殖初期にマクロファージが関与すること, (2)遊走・増殖する平滑筋細胞では, 脱分化や再分化に伴うimmunophenotypeの変換がもたらされることなどが示唆された. |