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川田忠典, 舟木成樹, 西村晃一, 中村聰, 阿部裕之, 三枝隆, 岡田忠彦, 武井裕, 稗方冨蔵, 山手昇 |
| Abstract ： |
1992年12月前での過去12年間に当施設にて手術治療を行ったA型大動脈解離のうち大動脈基部病変合併例の手術成績, 遠隔予後を分析し, 手術術式選択について検討した. 36症例中解離が冠動脈口より遠位で終わった群17例(I群), 近位まで進展していたが, 外中膜の拡張がない群9例(II群), 解離病変の大動脈基部への進展による大動脈基部破壊例6例及びAAEを合併した4例の計10例からなる大動脈基部病変合併群(III群)の3群に分類された. I, II群は上行大動脈, あるいは上行弓部置換(1例のwrappingを含む)のみ行い, 病院死亡率及び10年累積生存率は各々19.2%, 88.0%であった. 一方, III群に対しては8例に弁付きグラフトによる大動脈基部再建術及び2例に上行置換＋右冠状動脈血行再建術を行い, 20.0%の病院死亡率, 55.6%の10年生存率で, 前群と有意差はなかった. 大動脈基部病変合併例で, 内膜亀裂がパルサルバ洞に及ぶもの, 大動脈基部に解離が及び外中膜が破裂したもの, 及びAAE合併例は最初から大動脈基部再建術式が選択される. その際Carrel patch手技によるmodified Bentall手術が合併症なく最適な術式であった. 冠状動脈離断は右側に多く, 自家静脈による冠血行再建術が救命的である. 解離が冠状動脈口より近位に及んだ例で, 上行置換にとどめる場合, 解離腔の確実な閉鎖が術後の大動脈基部吻合部出血及び冠血行障害防止上, 重要である. 出血制御因難な場合は大動脈基部再建術式への変更, 冠血行障害が疑われたならば冠血行再建術の併用を躊躇すべきではない. |
