アブストラクト(41巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 胸部大動脈遮断時における対麻痺予防に関する研究-大脳皮質運動野刺激による運動神経誘発電位からの検討-
Subtitle :
Authors : 浜谷秀宏, 小松作蔵
Authors(kana) :
Organization : 札幌医科大学第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 41
Number : 8
Page : 1347-1356
Year/Month : 1993 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 脊髄運動高下行路及び前角の運動ニューロンのモニタリングとして, 犬において大脳皮質運動野を刺激し, 末梢の運動神経より電位(evoked motor nerve action potential:EMNAP)を導出することに成功し, この電位の特性を検討した. また, 脊髄虚血下において, 電位と従来の体性感覚誘発電位(SSEP)及び脊髄誘発電位(ESCP)を同時に導出, 比較し, 本電位の理論的妥当性, 優位性を病理学的所見と併せて検討した. EMNAPは潜時10~18msecの間に2相性の陰性電位(N1, N2)とそれに続く多相性の電位(N3+n)を有し, 下肢のEMNAPの刺激閾値は, 大脳十字溝前方の大脳縦裂寄りで最も低値であった. EMNAPの周波数特性は, 高頻度刺激により, N2, N3+nの振幅が減弱し, また, 後根を切断してもN2, N3+nは消失しなかった. EMNAPとSSEP及びESCPの3電位を同時に導出し, 左鎖骨下動脈遮断, 同動脈分岐直下で下行大動脈を部分遮断し, 遮断末梢側圧を徐々に低下させていくと, 45.2±6.2mmHgにてEMNAPのみが消失した. この状態で90分間部分遮断を続けてもESCP, SSEPともに消失しなかったが, ホルマリン灌流固定による病理組織所見では, 同様に固定した正常群と比較して前角細胞の虚血傷害が認められた. EMNAPは最終的に脊髄前角のα-motoneuronを介していると考えられ, ESCPやSSEPが消失しない臨界的虚血下でも消失し, 病理組織学的にも前角細胞の傷害が認められた. 対麻痺予防のためには傷害に最も弱い前角のα-motoneuronを直接モニタリングすることが最も鋭敏且つ理論的であり, EMNAPは胸部外科領域のみならず, 他科領域の脊髄運動機能モニタリングにも有用と思われる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 大脳皮質刺激, 脊髄運動系下行路, 前角細胞, 対麻痺, 体性感覚誘発電位
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