| Authors ： |
八田光弘, 野々山真樹, 盆子原幸宏, 斎藤聡, 前田朋大, 勝間田敬弘, 青見茂之, 遠藤真弘, 橋本明政, 小柳仁 |
| Abstract ： |
1987年より1991年9月までに, 4時間以上の大動脈遮断を要した症例は15例であった. 心筋保護方法は, 大動脈遮断後ヤング氏液(4℃, 100ml)により心停止を誘導後, GIK液(グルコース, インスリン, カリウム液)(1,000ml)による間歇的冠灌流(30分毎)と冷却血液による持続冠灌流の併用法により施行した. 術前, 大動脈弁閉鎖不全症(AR 2度以上)による拡張性心肥大を認めた症例(LVDd＞60mm, LVDs＞45mm:A群)は7例, 認めなかった症例(LVDd＜60mm, LVDs〈45mm:B群)8例の2群に分類し, その心筋保護効果について比較検討を行った. 術前心係数(CI)(l/min/m2)はA群4.34±1.04, B群4.67±0.29(NS), また大動脈遮断時間(分)はA群253±9.7, B群279±27.3と有意差はなかった. 術後CIはA群2.93±0.87, B群4.30±0.8とA群で低下した(p＜0.01). 術後呼吸器離脱が可能となるまでの期間(日)は, A群3.95±1.28に対し, B群では1.25±0.6であった(p＜0.01). 術後心筋逸脱酵素値と虚血時間との相関は, 血清GOT値(U/dl)A群:Y＝2.60X-559.8(R＝0.86), B群:Y＝2.15X-443.8(R＝0.84)とA群で増加を認め, 術後CK-MB値においてもA群:Y＝53.5X-12,381.6(R＝0.98)と正相関を認めた. 術前後の%shortening fraction(% SF)は, A群では術前0.34±0.12%, 術後0.17±0.1%と有意な低下を示し(p＜0.05), B群では術前0.44±0.12%, 術後0.43±0.12と有意差を認めなかった(paired t-test). 今回の検討から術前拡張性心筋病変を有した症例に対する4時間以上の大動脈遮断例では術後有意な心機能の低下を認め, GIK液による現行心筋保護法の限界と考えられた. |
