Abstract : |
肺を高圧酸素下(以下OHP)に24時間保存しその効果について検討した. 12~20kgの雑種成犬20頭をコントロール群5組とOHP群5組の2群に分けた. コントロール群ではドナー犬を胸骨縦切開で開胸しSt. Thomas Hospital液で心停止させた後肺をEuro-Collins(E-C)液+PGI2でフラッシュし, 心肺を4~6℃のE-C液に24時間浸漬保存した. OHP群ではコントロール群と同様にして肺をフラッシュした後2絶対気圧の高圧酸素容器内(95%酸素, 5%炭酸ガス)に収容し24時間浸漬保存し た. その後2群共左肺のみを分離しレシピエント犬に移植した. 移植後FiO2 1.0, PEEP 5cm H2Oで換気し, 再灌流直後, 1時間後, 2時間後, 3時間後に右肺動脈を5分間遮断し血液ガス, 肺血管抵抗を測定, また保存前と後にATPを測定し移植肺の機能評価を行った. PaO2はコントロール群では再灌流直後は177±88mmHgと良好であったが3時間後には75±34mmHgと低下し肺水腫が著明となり, 4頭で気道内に血性泡沫痰が出現した. OHP群では3時間後も256±58mmHg以上と良好であり, 血性泡沫痰は出現しなかった. PaCO2も再灌流後3時間でOHP群31±2mmHg, コントロール群41±3mmHgとOHP群が有意に低かった. しかし移植肺の肺血管抵抗は2群共再灌流後著明に増加し2群間に差はなかった. 結論:肺を2絶対気圧下Euro-Collins液内に24時間浸漬保存しコントロール群と比較検討したところ, OHP群では移植肺のガス交換能はよく保たれ有意差が認められた. |