Authors : |
鈴木伸一, 近藤治郎, 井元清隆, 梶原博一, 戸部道雄, 坂本哲, 磯田晋, 山崎一也, 野一色泰晴, 松本昭彦 |
Abstract : |
僧帽弁狭窄症(MS)に対する外科治療は開心術の進歩と共に, 閉鎖式僧帽弁交連切開術(CMC)から直視下交連切開術(OMC)及び弁置換術(MVR)が一般的となって来た. 更にMSに対する新しい治療法として, 経皮経静脈的僧帽弁交連裂開術が注目され, 盛んに施行されている. CMCの治療成績を検討することは, 今後のMSに対する治療方針を考慮する点で有用と考え, 今回CMCの治療成績をOMC, MVRと比較検討した. 対象:1965年から1978年までにCMCを施行した117例, 1980年から1991年までにOMC, MVRを施行した夫々72例及び37例を対象とした. 結果:(1)CMC群は手術死亡2例, 遠隔期死亡17例で, 生存率は5年95%, 10年91%, 15年86%であった. OMC, MVR群に死亡例はなかった. (2)event-free rateはCMC群で5年89%, 10年79%, 15年58%, OMC群で5年97%, 10年97%とCMC群で低値であった. MVR群は4年95%, 5年90%であった. (3)CMC群40例(34%)に対し, 術後平均10年5ヵ月で再手術を施行した. 再手術の理由は再狭窄が22例, 閉鎖不全症が10例, 狭窄兼閉鎖不全症が8例であった. OMC群は閉鎖不全発症の1例, MVR群は血栓弁1例に再手術を施行した. (4)CMC群に術後脳塞栓が6例(術後急性期1例, 遠隔期5例), 下肢塞栓症が1例発生した. OMC群, MVR群に血栓塞栓症の発生はなかった. まとめ:CMC群は急性期閉鎖不全の発症や遠隔期塞栓症も多く生存率, event-free rateはともにOMC5年10年後, MVR4年後のそれに比して低く, 再手術も高率であった. |