アブストラクト(41巻9号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 新しい抗血栓材料を用いた抗血栓性経皮的心肺補助システムの開発
Subtitle :
Authors : 川人宏次, 井野隆史
Authors(kana) :
Organization : 自治医科大学大宮医療センター心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 41
Number : 9
Page : 1467-1477
Year/Month : 1993 / 9
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 補助循環回路の血液接触面のコーティング材料として新しく開発された親水-疎水型ミクロ相分離構造を持つFluorine-Acryl-Styrene-Urethane-Silicone(FASUS)copolymerの抗血栓性評価をex vivo系においてはウサギ頸動脈間シャント法で, また実際の抗血栓性Veno-arterial bypass(VAB) modelとして微量ヘパリンで維持したイヌVAB法で行った. 頸動脈間シャントモデルにおいては, 対照群(n=4)のポリ塩化ビニルのシャントチューブでの血栓閉塞時間が平均3.0±0.8分であったのに対し, FASUSでコーティングしたシャントチューブ群(n=4)では109.5±34.7分半有意な閉塞時間の延長を認めた(p<0.001). VABモデルにおいては, コーティングをしていない通常のポリ塩化ビニルチューブを用いた対照群(n=6)では, 全例の回路内に血栓形成が認められ, また走査電子顕微鏡(SEM)上も高度に変形した血小板とフィブリンの凝集が認められたのに対し, FASUS copolymerで回路をコーティングした群(n=6)では, 全例に回路内の血栓形成がなく(p<0.005), SEM上の血小板の形態変化も軽微であった(p<0.05). このFASUS copolymerをヘパリンコーティングを主としたLow dose systemic heparinizationの抗血栓性経皮的心肺補助システム(PCPS)のカニューラに臨床応用した. この結果, 離脱率72.2%, 長期生存率33.3%と良好な成績を得るとともに, 同カニューラによる臨床上の血栓塞栓症の発生およびカニューラの肉眼的血栓付着は認められなかった. 以上の実験及び臨床応用の結果より, FASUSの補助循環回路の抗血栓性コーティング材料としての有用性が示唆された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 補助循環, 経皮的心肺補助システム, V-Aバイパス, 抗血栓性材料
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