Abstract : |
高度冠状動脈狭窄病変に対する冠状動脈バイパス手術症例の増加に伴い, 狭窄部末梢の心筋保護効果を目的に逆行性冠灌流法(以下RCSPと略す)が再評価されてきた. しかしRCSPでは至適灌流圧が制限され, 心筋間質の浮腫を生じやすいことが指摘されている. 今回, 雑種成犬において冠状動脈左前下行枝の狭窄モデルを作り, 冠灌流法をI群:順行性, II群:定常流逆行性, III群:拍動流逆行性の3群に分け, その心筋保護効果と安全性を比較検討した. 冠灌流後のE max値は, I群(9.6±2.7)に対しII群(13.1±2.6)・III群(13.1±2.9)において有意に高値を示し, 左室機能が良好に保たれていることが確認された. 狭窄部末梢の冠灌流後の局所心筋収縮率も, 前値に対する相対比でI群(56.4±11.2%), II群(76.2±17.2%), III群(87.9±16.9%)とII・III群が有意に優れていた. 局所心筋温は, III群において右心系も含めた心筋全体に対する迅速且つ均等な冷却が得られた. 病理学的検討では, I群における軽度の虚血性障害と, II群における心筋細胞浮腫と心筋束間浮腫が特徴的であった. III群では組織形態の維持が最も優れていた. 以上より, 拍動流逆行性冠灌流法の有効性と安全性が確認された. |