Authors : |
八田光弘, 盆子原幸宏, 野々山真樹, 外山聡彦, 斎藤聡, 根本慎太郎, 佐藤志樹, 勝間田敬弘, 今牧瑞浦, 小柳仁 |
Abstract : |
今回, われわれは, 心保存液HTK灌流後120分単純遮断法を弁膜症開心術に導入し, 従来のGIK液と比較検討したので報告する. 1992年5月より9月までに施行された開心術22例に対し, HTK液を導入し, 従来のGIK法を使用した34例と比較した. 大動脈遮断時間はHTK群121.6±40.5分, GIK群114±41.1分であった(NS). 術前心係数(CI)は, HTK群2.53±0.64, GIK群2.93±0.87(NS), %shortening fraction(%SF)(%)は, HTK群31.4±6.8, GIK群29.3±6.5であった(NS). HTK群では, 大動脈遮断後HTK液(3L)により初回冠灌流を行い, その後120分間局所冷却のみとし, 120分以上では, 60分毎にHTK 1lを追加した. 術後CIはHTK群3.67±0.76, GIK群4.34±1.04(NS), %shortening fraction(%SF)はHTK群26.0±5.26, GIK群25.6±9.2(NS)であった. 遮断解除から180分までの冠静脈洞から採取した血液のCK-MB値はHTK群では遮断解除後60, 180分でHTK群で有意に低値を示した(p<0.05). 術中生検による電顕所見では, GIK群では, 虚血40分後よりミトコンドリアの浮腫化を認め, 虚血180分では更に心筋障害は進行している. これに対して, HTK群では虚血180分においても心筋細胞の構築は良好に保持されており, 正常心筋像を示した. 術後カテコラミン(DOA+DOB)量(γ)はHTK群2.65±1.3, GIK群10.3±3.4とHTK群で有意に低値を示した(p<0.01). HTK液を用いた心筋保護法は120分単純遮断を可能とし, 手術操作の簡略化と共に, 心筋保存効果においても形態学的, 酵素学的にGIK液と比較し, 有意な改善を認めた. |