Abstract : |
経胸壁心エコー法(TTE)により冠状動脈バイパス術に用いた左内胸動脈(LITA)グラフトの遠隔期開存性を評価した. 術後6ヵ月以上経過の36症例を対象とし, グラフト造影とTTEによるグラフト血流速度測定を行った. このうち, 血流速度測定が可能だった25例(sensitivity 71.4%, specificity100%, 男21例, 女4例, 平均年齢57.9歳, 平均術後経過期間29.6ヵ月)を検討の対象とした. 造影所見から, 術前狭心症でグラフト狭窄のない15例のAPS(-)群, 術前狭心症で75%以上のグラフト狭窄を認めた2例のAPS(+)群, 梗塞領域にバイパスした症例でグラフト狭窄のない8例のOMI群の3群に分け比較した. 血流波形から最高流速と時間速度積分値の拡張期/収縮期(D/S)比とD/(S+D)比を算出した. 最高流速及び時間速度積分値D/S比は, APS(-)群(2.48±0.73, 3.21±0.89)がAPS(+)群(0.30±0.23, 0.35±0.21), OMI群(0.96±0.44, 0.87±0.51)より有意に高値を示した(p<0.01). 最高流速及び時間速度積分値D/(S+D)比においても, APS(-)群(0.70±0.05, 0.75±0.06)はAPS(+)群(0.22±0.14, 0.25±0.11), OMI群(0.46±0.17, 0.43±0.18)より有意に高値を示した(p<0.01). また, 最高流速D/(S+D)比においては, OMI群はAPS(+)群より有意に高値を示した(p<0.01). 以上から, TTEを用いた血流速度測定により, LITAグラフトの狭窄を推定できると考えられ, 本法は遠隔期のグラフト開存性の評価に役立つと思われた. |