アブストラクト(41巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心移植後の冠状動脈硬化に関する実験的研究―特に免疫抑制剤の影響について―
Subtitle :
Authors : 長嶺進, 毛利平
Authors(kana) :
Organization : 東北大学医学部胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 41
Number : 10
Page : 2040-2048
Year/Month : 1993 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 心移植後に起こる冠状動脈硬化は重大な遠隔期合併症の1つであるが, その原因, 予防法等についてはいまだ十分な解明がなされていない. 本研究では作用機序の異なる免疫抑制剤を用いて移植後の冠状動脈硬化の程度と血清脂質の変動を検討することを目的とした. F-344ラットをドナー, Lewisラットをレシピエントとして腹部に異所性に心移植を行った. 免疫抑制剤としてサイクロスポリン(Cs群), FK-506(FK群), 15-デオキシスパガリン(DOS群)を投与し, 移植60日後に移植心の拒絶反応及び冠状動脈硬化を組織学的に検討し, 同時に血清脂質を測定した. なお拒絶反応の程度はgrade0~3, 冠状動脈硬化の程度はgrade0~4で評価し, grading score(GS)を算出して半定量的に検討した. 拒絶反応のGSはCs群2.0±0.7, FK群2.2±0.6, DOS群2.0±0.5で3群間に有意差はなかった. 冠状動脈硬化のGSはCs群1.71±0.24, FK群1.49±0.4, DOS群1.11±0.34でDOS群はCs群より有意に低値であった(p<0.01). 血清脂質の検討ではCs群の中性脂肪はFK群とDOS群より有意に高く(p<0.02), Cs群及びFK群のLDLはDOS群より有意に高値であった(p<0.01). 心移植後の冠状動脈硬化の発生にはマクロファージや液性抗体などを中心とした免疫反応が中心的な役割を演じていると考えられているが, DOSはマクロファージの活性化や抗体産生を抑制することが知られており, これがDOS群の冠状動脈硬化が軽度であった理由の1つと考えられた. またCsやFKは血清脂質を増加させ, 冠状動脈硬化を促進する可能性があると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心移植, 冠状動脈硬化, 免疫抑制剤, 血清脂質
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