アブストラクト(41巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 弓部大動脈再建時の補助手段としての逆行性脳灌流法の問題点
Subtitle :
Authors : 八巻文貴, 橋本明政, 青見茂之, 平山統一, 田鎖治, 林和秀, 今牧瑞穂, 秋本剛秀, 坂橋弘之, 小柳仁
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学日本心臓血圧研究所循環器外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 41
Number : 10
Page : 2086-2092
Year/Month : 1993 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 逆行性脳灌流法は近年弓部大動脈領域の血行再建術に使用されるようになっている. 今回, 教室及び関連施設で行った, 同様の手技による逆行性脳灌流法施行26例につき灌流時の諸条件と術後の脳神経合併症に関して検討した. われわれは超低体温下の選択的上大静脈送血により逆行性脳灌流を行っているが, 灌流条件は平均直腸温18.4℃, 平均灌流圧28.3cmH2O, 平均流量360ml/minであった. 逆行性脳灌流時間は, 平均74.1分(最短42分, 最長131分)であった. 手術死亡は2例であった. 1例に静脈弁によると思われる灌流障害を認めた. 急性期死亡のために意識の確認ができなかった1例を除き全例で意識は覚醒した. 術後脳神経障害については, 5例で意識の覚醒遅延, せん妄及び中枢性と思われる呼吸障害を, また複視を2例に認めた. 更に1例に術後脳梗塞の合併を認めた. 脳梗塞の1例を除き, いずれも回復は良好であり, 後遺障害は認められなかった. 今回の結論として, 同法は脳保護法として有効ではあるが, 灌流時間80分以上の症例に可逆性ながら精神神経症状が多く, 80分以内を安全な灌流の条件とすべきであると思われた. また, 高齢者, 脳予備機能の低下例には長時間逆行性脳灌流は一過性脳機能障害を起こしている可能性を否定できない. 更に上大静脈造影は術前に施行すべき検査であると思われた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 逆行性脳灌流法, 脳保護効果, 弓部大動脈血行再建術
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