アブストラクト(41巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 漏斗胸矯正術後の肺機能の推移
Subtitle :
Authors : 田中文啓*, 北野司久, 神頭徹, 黄政龍, 長澤みゆき, 辰巳明利**
Authors(kana) :
Organization : 天理よろづ相談所病院胸部外科, *松江赤十字病院呼吸器科, **高知市民病院胸部心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 41
Number : 11
Page : 2161-2165
Year/Month : 1993 / 11
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 漏斗胸矯正術を施行した54例(腹直筋有茎性胸骨翻転術31例, PLAストラットを用いた胸骨挙上術23例)の術後の肺機能の推移を術前と比較し検討した. %肺活量は術後3ヵ月目に80.5%と術前(97.3%)に比べ有意に低下し, 術後6ヵ月目87.4%, 12ヵ月目82.8%, 24ヵ月目85.9%, 36ヵ月目77.7%とほぼ横ばいとなりいずれも術前値を下回った(p<0.01). 手術術式別に検討すると, 胸骨翻転術施行群では術前値95.7%が術後3ヵ月目に80.8%と低下し, 6ヵ月目, 12ヵ月目, 24ヵ月目, 36ヵ月目にそれぞれ84.4%, 78.8%, 76.7%, 71.0%と改善を認めなかったが, 胸骨挙上術施行群では術前値99.5%が術後3ヵ月目には79.6%と低下するが以後6ヵ月目, 12ヵ月目, 24ヵ月目, 36ヵ月目にそれぞれ93.5%, 88.0%, 94.0%, 91.3%と術前と有意差のない値まで回復した. すなわち術後3, 6ヵ月目には%肺活量は術式間に有意差がないものの, 12ヵ月目(p<0.05), 24ヵ月目(p<0.02), 36ヵ月目(p<0.02)と時間の経過と共に胸骨挙上術施行群の方が良好な値を示した. 一方, 一秒率及び残気率は術後有意な変化を認めず, また手術術式による差を認めなかった. 以上より吸収性高分子材料であるPLAストラットを用いた胸骨挙上術は, プラストロンを翻転固定する胸骨翻転術と異なり骨性胸郭をより生理的な形で再建するだけでなく, 胸郭運動を制限するストラットが時間と共に生体内に吸収され, 肺機能を低下させる因子が少ない優れた術式であり, 術後の%肺活量の良好な回復は本術式のこのような利点を反映していると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 漏斗胸, 肺機能, 胸骨翻転術, 胸骨挙上術, ポリ乳酸
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