| Authors ： |
小川恭一, 樋上哲哉, 麻田達郎, 向原伸彦, 大保英文, 杉本貴樹, 中村雅彦, 脇山英丘, 河村剛史, 西脇正美 |
| Abstract ： |
大動脈弓部再建に際しては, 全身の重要諸臓器の総合的な保護が必要であるが, なかでも安全な脳保護とdebrisによる脳梗塞の防止が最重要課題である. われわれはこの課題に対処する目的で, 弓部3分枝動脈にballoon catheterを用いて選択的脳灌流を行い, 冠静脈洞よりの逆行性冠灌流法との組合せで, 自己大動脈に血管鉗子を使用しないnon-clamping selective cerebral perfusion法を工夫開発してきた. 本稿では1991年3月より1992年10月までの弓部再建連続21例で本法を用いた結果を報告する. 対象疾患は上行弓部真性瘤2例, 遠位弓部真性瘤10例, A型大動脈解離症急性期3例, 再手術例2例を含むA型大動脈解離症慢性期6例であった. これらに対し本法を用い, 人工血管内没による再建術17, 人工血管パッチ修復術4を行い, 大動脈弁置換術2, 冠動脈バイパス術2が同時に行われた. 全例で脳障害はみられず, 心筋梗塞, 肺出血, 肝不全, 消化管壊死, 血液凝固障害などみられなかった. 肺炎及び腎不全を合併した1例が術後37日目に死亡したが他の20例は退院し, 術後2～20ヵ月の現在平常の生活が可能である. 本法は脳障害の防止のみならず, 全身諸臓器の保護が安全に出来るため, 大動脈弓部再建に有利な方法と思われる. |
