アブストラクト(41巻11号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 食道穿孔に対する大網引き入れ充填閉鎖術―自験例及び実験的検討―
Subtitle : 症例
Authors : 久吉隆郎, 桜井蔚生, 難波亨, 天野純治
Authors(kana) :
Organization : 日本医科大学第二病院外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 41
Number : 11
Page : 2288-2293
Year/Month : 1993 / 11
Article : 報告
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 強度の炎症性変化のために縫合閉鎖不能に陥った食道穿孔症例に, 大網引き入れ充填閉鎖術を行い良好な結果を得た. 本法は胃・十二指腸穿孔では有効性が確認されているが, 食道に応用した報告はなく, その後に動物実験で追試を行い, 組織学的修復機転について検討した. 臨床例:59歳, 男性. 食餌性食道閉塞に対して内視鏡検査後に発症, 約54時間後に緊急手術を行い胸部下部食道に約2cmの穿孔を認めたが, 壁の脆弱化のために縫合閉鎖不能の状態であった. このため穿孔部より内腔に大網を引き入れて充填閉鎖術を行った結果, 順調に経過し穿孔部は完全に修復された. 動物実験:雑種成犬10頭を用いて, 電気凝固法により胸部下部食道に直径1cm以上の穿孔を作り大網充填術を施行. 術後1~4週に内視鏡的観察を行い穿孔部を採取した. 内視鏡所見では術後1, 2週に大網は食道内腔に突出しているが, 3週以降は平坦となり, 4週には正常部との区別が困難となった. 組織学的には, 術後1週は大網の形態はほぼ保たれているが炎症反応が著明にみられ, 2週では肉芽形成と穿孔部境界に扁平上皮が出現, 更に3週には穿孔部が肉芽組織で埋まり, 表層は重層扁平上皮が完成していたが, 食道腺は欠いていた. この肉芽組織には大網からの豊富な血管新生が見られた. この過程は既に報告されている胃・十二指腸潰瘍穿孔時の大網充填と同様の極めて生理的な欠損部の修復であった. 従って本法は, 縫合不能な食道穿孔に対して局所の感染巣自浄作用のみならず, 穿孔部の確実な修復の点からも有用な術式であると考えられた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 食道穿孔, 食道破裂, 大網引き入れ充填術, 大網充填術, 大網移植術
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