Abstract : |
Continuous warm blood cardioplegiaの至適投与経路について代謝・不整脈・血清酵素・心機能・心筋浮腫の面から検討した. 雑種成犬を用い完全体外循環下に120分の大動脈遮断とその後60分の再灌流を行い, 心筋保護液の投与経路で経大動脈基部, 順行性(A群)と経冠静脈洞, 逆行性(R群)とを比較した. 血中乳酸・ビルビン酸から算出した過剰乳酸値・酸化還元電位較差・心筋乳酸摂取率で判断すると, 大動脈遮断中A群は好気性代謝を維持できたがR群は部分的に低酸素状態に陥っていた. また心筋酸素摂取率は大動脈遮断中は同程度であったが, 再灌流5分後にA群40.9±8.1%, R群 22.4±9.4%でR群が低率となり, 冠状動脈流量の増加による酸素摂取能低下と推察できた. 再灌流後のV.F.発生率はA群1/7, R群7/7でR群が高率であった. 全経過中の心筋逸脱酵素(CPK-MB, HBDH)遊出量・再灌流直後における過酸化脂質(MDA)の冠動静脈洞較差・体外循環前に対する再灌流60分後の心機能(C.I., ±LV max dp/dt, E max)回復率・再灌流60分後の心筋水分含有量にはA群R群間に有意な差は認められなかった. warm BCPの逆行性投与法は, 順行性に比し心機能回復率や心筋逸脱酵素遊出量では遜色ないものの, 大動脈遮断中に部分的な低酸素状態に陥り再灌流後に不整脈を高率に発生することが示唆され, 現時点では症例を選び慎重に使用すべきと考える. |