アブストラクト(41巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺癌切除術前後の喀痰喀出力の定量的評価
Subtitle :
Authors : 滝沢恒世
Authors(kana) :
Organization : 新潟大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 41
Number : 12
Page : 2319-2324
Year/Month : 1993 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 流体力学的考察から「咳嗽力」=(咳嗽力係数)×(呼出流量の2乗の時間積分)として喀痰喀出力の定量的評価方法を考案した. 「咳嗽力」をもとに肺癌切除術前後の喀痰喀出力と術後去痰困難について検討した. 術前呼吸機能検査で1秒率75%以上であった6例と1秒率60%以下であった5例において, 術前, 術後2日目, 術後14日目に起座位で自発的最大努力の咳嗽時最大胸腔内圧と呼出流量及び呼出気量を同時測定した. 「咳嗽力」(N・s/m2)は1秒率60%以下の5例では術前64±12, 術後2日目13±5, 術後14日目22±6で, 1秒率75%以上の6例では術前171±65, 術後2日目43±12, 術後14日目62±16で, 術前, 術後2日目, 術後14日目とも両者の間に有意差があった. しかし胸腔内圧と呼出気量は術前, 術後2日目, 術後14日目のいずれも両者の間に有意差はなかった. 術後の呼出流量の減少率を(術後残存肺区域数)÷(術前区域数-閉塞区域数)と仮定して術前の「咳嗽力」を補正し, 「咳嗽力」補正値から術後の去痰困難を予測してみると, 「咳嗽力」補正値が50以下で高率に術後去痰困難例が発生し, 「咳嗽力」補正値のレベルが低いほど去痰困難は重症で肺合併症を伴う危険が増した. 以上の検討で「咳嗽力」が喀痰喀出力の定量的評価法として有用であることが判明したが, 「咳嗽力」より簡便な喀痰喀出力の指標を求めて「咳嗽力」と呼吸機能検査諸量の相関性を検討した. 「咳嗽力」と最も相関の良い呼吸機能量は体表面積当たりの1秒量(以下1秒量/M2と略す)であり, 術後去痰困難の発生率が高率であった「咳嗽力」補正値が50以下のレベルは術後予測1秒量/M2で800ml以下に相当した. 1秒量/M2は喀痰喀出力の簡便な指標として利用できる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 肺癌, 喀痰喀出力, 術後去痰困難, 1秒量/M2
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