Authors : |
舟波裕, 奥山和明, 小出義雄, 坂本昭雄, 神津照雄, 山本義一*, 関幸雄*, 嶋田裕**, 磯野可一 |
Abstract : |
成人遺体71体に対し, 右開胸下食道癌手術視野から, 右気管支動脈の起始部と走行を肉眼解剖学的に観察し, 手術の際の温存方法について, 肋間気管支動脈を中心に検討した. 肋間気管支動脈を欠如する例は3/71体(4.2%)と少数であった(A群). 右気管支動脈が肋間気管支動脈1本のみの群は22.6%であり(B群), その温存が重要と考えられた. 肋間気管支動脈と共に, それ以外の右気管支動脈を有する群は50/71体(70.4%)と過半数に認められた(C群). また少数ではあるが, 大動脈に起始した後, 肋間気管支動脈と同様の走行を示す右気管支動脈(以下, 類肋間気管支動脈と仮称)を有する例も観察された(D群). 一方, 右気管支動脈はその起始する血管によって, I.肋間気管支動脈, II.大動脈分岐枝, III.その他の動脈(右鎖骨下動脈, 右下甲状腺動脈, 右内胸動脈に起始する動脈)の3型に分類された. 視野の深さや周辺臓器との位置関係等から, I, II, IIIの各型の右気管支動脈の温存の可能性を検討すると, Iの温存は容易であり, 次にIIIが温存の可能性を持ち, IIはほとんどでその温存が困難であると思われた. 肋間気管支動脈は欠如例が少なく, 温存が容易であるのに対し, 他の右気管支動脈は損傷の可能性が高く, 右気管支の血流を温存するためには, 肋間気管支動脈の温存が重要と考えられた. |