Authors : |
山口眞弘, 築部卓郎1), 大橋秀隆, 今井雅尚, 大嶋義博, 細川裕平2), 橘秀夫3), 宮下勝4), 斉藤寛5), 武田義敬5) |
Abstract : |
小児漏斗胸に対する矯正術式には数多くの方式が考案されているが, いまだ画一的な手術法はない. われわれは1970~1979年までの前期(I群)29例に対してはキルシュナー鋼線を用いた胸骨挙上法及び変形肋軟骨の骨膜下軟骨全切除を行った. しかし術後, 奇異性呼吸による呼吸困難を来した症例を経験したため, 1980年以降の後期(II群)82例に対し胸骨外牽引法を併用し良好な結果を得た. そこでわれわれが現在採用している外牽引併用胸骨挙上術の臨床的評価を行った. 胸壁の変形の評価方法は, 胸部X線側面像から胸骨最陥凹部の胸骨椎体後面間距離A, 椎体前後径B, Louis角における胸骨椎体前面間距離C, 陥凹距離D, 最陥凹部胸骨椎体前面間距離Eを求め, B/A, D/C, E/Cを指標とした. 各指標とも手術前は両群間に差はみられなかった. 術後早期(1年以内)では, I群のB/A, D/C, E/Cは0.28±0.06, 0.14±0.19, 1.09±0.32(mean±S.D.)であり, D/C, E/Cにおいて有意な改善がみられた(p<0.05, p<0.005). 一方, II群は0.26±0.04, 0.04±0.18, 1.30±0.25であり, 3指標とも有意な改善がみられた(p<0.005). またD/C, E/CではII群はI群より改善度は有意に良好であった(p<0.005). 術後遠隔期(3年以上)でも同様にI群ではD/C, E/Cにおいて, II群では3指標とも術前に比し有意な改善がみられ, D/Cは統計学的に有意差はないもののI群に比べてII群で低値を示した. Vertebral index(B/A)でみた術後遠隔期の胸郭の成長はI, II群ともほぼ良好であった. 以上よりキルシュナー鋼線を用いた胸骨挙上法に加えての外牽引の併用は術後早期の管理を容易にし, より確実な胸骨の変形矯正が得られる点で有用な方法であると考えられた. |