Abstract : |
胸部外科開設後5年間に行った15歳未満開心術症例は117例で, 初期無輸血充填例は57例あり, 46例が無輸血を完遂した. 落差脱血による従来の体外循環回路を使用した1988年から1990年まで(前期)の無輸血例は12例で, 最低体重例が13kgであり, ASD及び軽症VSDが主体であった. 回路の工夫を行って体外循環充填液量を減量化した1991年以降1993年4月まで(後期)に行った無輸血例は34例で, 最低月齢7ヵ月, 最低体重6.5kgであり, 前期疾患に加え乳児VSD・PH及びTOFなどが可能になった. 回路充填液は, 静脈リザーバーに壁吸引で-10~-40mmHgの陰圧をかけて, 脱血及び吸引を同時に行うことでポンプを減らし, 送血用にローラーポンプを1基使用するだけの回路として, SS回路で500mlまで減量した. 体外循環は3.0~4.0l/min/m2の高流量体外循環を基本とし, 体外循環中の最低Hb値は加温時のSVO2からみて5g/dlが一応の安全限界と考えられた. 疾患別では, ASD及び軽症VSDではほぼ全例無輸血手術が可能である. 乳児VSD-PH例は, 貧血がなければ体重6~7kgで無輸血手術は可能である. TOFは初回手術では高率に無輸血手術が可能であり, 今後さらに乳幼児開心術の適応が拡大できるものと考えられる. |