Abstract : |
補助人工心臓(Ventricular assist device:VAD)は重症の心不全症例の治療に強力な補助効果を有し, 優れた成績を治めるようになってきている. 右心補助人工心臓(Right Ventricular Assist Device:RVAD)は高度の右心不全に対し強力な流量補助効果を有しているが, 低圧系である肺循環系に送血する点で, 肺機能障害, 右心不全などから病態悪化を招く可能性がある. しかしながら, その補助効果と弊害については十分な検討が行われていない. これを明らかにする目的で, RVADによる補助流量を変化させた場合の血行動態の変化と肺への影響について急性実験を行い検討した. 体重40±3.4kgのブタを用い, 肺動脈幹を絞扼し肺動脈血流量を約60%まで低下させ右心不全モデルにRVADを固定rate(100beat/min, S/D35%)で駆動し, RVADのflowをAo flowの約30%としたものをI群(低流量補助群:N=9), 約60%としたものをII群(高流量補助群:N=9)と設定し比較検討を行った. RVADの右心前負荷軽減効果はいずれの群においても著明であった. RVAD駆動3時間後の左心機能は, II群ではLVEDP, LAPは上昇し, AoP, Ao flowは低下しI群との間に有意差を認めた. 肺機能の変化は, II群でPaO2, PaCO2, SaO2, A-aDO2の変化率で見るとガス交換能はある程度保たれているが, 拡散能は徐々に低下した. 更に, 肺血管外水分量は駆動後3時間ではII群で有意に増加し, また, ACE値では有意に低下し, 肺は形態学的に高度の水腫性変化を呈した. 高流量補助では, 肺の生理機能を障害する可能性が示唆された. 単独右心補助時の過大な流量補助は右心不全を招来する可能性があり, 補助量の設定は, 左心, 及び肺機能に留意しながら慎重に決定する必要があると思われた. |