Abstract : |
15-Deoxyspergualin(DSG)は副作用の少ない新しい免疫抑制剤として近年注目されている. 今回われわれは, 心移植後の急性拒絶反応に対するDSGの免疫抑制効果, すなわちrescue効果についての実験的検討を行った. 実験にはラットの異所性心移植モデルを用いた. 急性拒絶反応が発現すると考えられる移植後第3日目(軽度拒絶反応), 4日目(中等度拒絶反応), 5日目(高度拒絶反応)からDSGを尾静脈から3日間連続静脈内投与した. 投与終了翌日に移植心を摘出し, その組織学的所見からDSGのrescue効果を検討した. また, 免疫組織化学染色も施行し, その浸潤細胞の検討からDSGの免疫抑制機序を考察した. 投与量は, 5mg/kg/日と10mg/kg/日の2群を設定し, 非投与対照群をあわせて3群間の比較検討を投与開始日別に行った. 組織所見は, (1)血管及びその周囲の病変(2)間質の病変(3)心筋の変化の3点を指標に観察した. 免疫組織化学染色ではCD4陽性細胞(ヘルパーT細胞), CD8陽性細胞(細胞障害性T細胞), マクロファージ(単球系細胞)を染色した. 組織所見の検討では, どの投与開始日においても, DSG投与例では非投与対照群と比較して拒絶反応の進行は抑制されていた. また, 早期に投与が開始された例ほど拒絶反応の進行が軽度であった. 免疫組織化学染色の結果, DSGはCD4陽性細胞及びCD8陽性細胞の局所浸潤を抑制していた. 投与量については, 10mg/kg/日のrescue効果が5mg/kg/日より優れていた. ラット心移植モデルに発生した急性拒絶反応に対して, DSGによるrescue療法は有効であると結論された. |