Abstract : |
肺放線菌症は, 最近では非常にまれな疾患であり, 特異的な症状のないことから診断に難渋することが多い. 症例は11歳, 女性. 胸部X線写真で左上肺野にびまん性浸潤影を認め, MRI, CTで左上前縦隔から左上葉及び胸壁への進展像を認めた. 次第に胸壁の腫脹と発赤が著明となり発熱を伴って自潰した. 精査・治療目的で掻爬・ドレナージ及び審査開胸を行い, 光顕で高度の炎症性細胞浸潤の中に肺放線菌症に特有な菌塊(sulfur granule)を認め肺放線菌症と診断した. 肺放線菌症は早期に診断してペニシリンを投与することが大切であり, まれにしかみられなくなったものの各種肺疾患の鑑別上念頭に入れておく必要がある. 近年, 肺カンジタ症や肺アスペルギルス症などの肺真菌症は増加傾向にあるのに対して, 病像や組織像が真菌症に類似しているため同類とされている肺放線菌症は, 他の深在性真菌症に比較して免疫力の低下したいわゆるcompromised hostにおける日和見感染が少なく1), 最近では非常にまれな疾患となっている2). また, 特異的な症状はなく, 診断に難渋することが多い. 今回われわれは, 前胸部腫脹で発症し, 精査を行ったが診断を得られず, 自潰したために掻爬・ドレナージを行って, 病理組織学的に肺放線菌症と診断された1例を経験したので, 文献的考察を加えて報告する. |